2003年度 病院コンサート〜愛のキャラバン隊(1)

病院の患者さんに元気を届けたいと思って参加したプログラムだったのですが、私の方がたくさんの、元気、勇気、優しさを もらいました。


今年の病院コンサートは、チャレンジプログラム最終日に行われました。朝早くから、学校での時間を惜しむように講堂で練習をした私達。開始2時間前には、逓信病院に到着しました。壁には私達が作ったポスターが貼られていました。
私達は、立ち位置を確認したりしながら、病院でも練習をしました。音楽の杉本先生も来てくれました。
練習なのに、通りがかりの患者さんが座って拍手をしてくれました。


そして、3:30。いよいよ、1年前先輩から聞いていた病院コンサートが始まりました。最初は、全員による「アメージンググレース」の合唱。患者さんの中には、眼帯をつけておられる方、点滴をしたまま来られた方、中には小さなお子さんもおられて、じっと見つめて、大きな拍手もしてくれました。
次にギターで「少年時代」と「カントリーロード」。ギターの後は、時代劇。元演劇部の子が脚本を書いて指導してくれた劇です。演じるのは劇などしたことのない子達がほとんどでした。でも、笑ってくれたり、拍手してくれたりしました。 
その後、私達がコーラスで「上をむいて歩こう」を歌った時には患者さんが一緒に口ずさみ始められました。患者さん達がよろこんでくれている。そう思うと、とてもうれしかったです。「ラブラブラブ」では、耳を済ませて聞き入っておられました。その後は、バイオリンによる「地上の星」。
  
そして、あっという間に最後のプログラム、全員による歌になりました。「夕やけ」「ふるさと」……。患者の皆さんが、私達の作ったしおりの歌詞を見ながら、みんな一緒に大きな声で歌い始められました。次の「川の流れのように」では、私達の半分以上が、通路に散って、患者さんの横にしゃがんで歌いました。
私が横についた患者さんは、はじめは下を向いて歌っていたのに、途中からしおりを持ち上げて歌いだされました。ひょっとしたら、患者さんが歌おうというような元気な気持ちになってくれたんじゃないか。そう思っていると、1番と2番の間に「ありがとう」と言ってくれて、うれしかったです。ふと前を向いたら、前で立って歌っていた友達が泣いていました。(彼女は、逆に、患者さんのそばで泣きながら歌っている友達を見て涙したそうですが。) この子達と歌えて本当に良かった。一緒に練習してきて、一緒に今ここで歌を歌って、何かしら共に盛り上がる感情を感じて……。そう思うと、胸が一気に熱くなりました。友達は隣りの患者さんに「青春を十分楽しむのよ」って逆に励まされて泣いちゃったそうです。気が付けば、場内は患者さんも含めてみんなの歌声でいっぱいでした。



そして、本当に最後の一曲がピアノで流れ始めました。

森山直太郎の「さくら」。3日後の卒業式で歌う歌。杉本先生の指導で何度も練習し、素晴らしいメロディーで、今年のチャレンジプログラムのテーマソングともいえる曲。今まで、園児との交流でも、復興住宅でもいつも歌ってきた曲。患者さんを真正面に見て、もう伴奏段階から腕で涙をぬぐって歌えなくなる子。途中から司会の子があいさつを始めたけど、その司会の子も途中で涙が込みあげてきて、みんなのハミングがしばらく流れました。
患者さんを励ましにきたんだから、私達が泣いちゃいけない。そう思っていたら、逆に、患者さんが大きな拍手と、「がんばれ」の声で私達を励ましてくれました。司会の子が体を震わしながら、「このコンサートによって、少しでも皆さんが楽しんでいただけたならうれしく思います………」としぼり出すように声を出したら、また拍手が起こり……。私は、さっき横で歌っていた患者さんからの「ありがとう」の言葉が耳から離れませんでした。

お互いに泣いたり、こらえたりしながら最後まで歌おうとする私達。コーラス部だけでなく、元バレーボール部、ダンス部、演劇部、水泳部、受験を終えたばかりの子、ほとんどの子が、こんなに人前で歌うのははじめてだったけど、全員で歌えたこと。患者さんたちが笑顔で見つめて耳を傾けてくれていたこと。拍手。歌。目をぬぐっておられる患者さんもおられたこと。何もかもが一つになれたようにも思い、胸がいっぱいになりました。

コンサート終了後、私達は手作りのメッセージカードを配りました。手渡しするたびに、ありがとうとか、いやされたよとか、励みになったよ。とか言ってもらって、また熱いものがあふれてきました。

その後、4階の控え室で、看護士長さんがみんなに花束をくれ、「寝たきりの方も皆さんの美しい歌声が階段を伝って聞こえてきてうれしかったそうですよ。私も患者さんも涙が出ましたよ。感動をありがとうございました。これからも人間のふれあいを大事に育ててください。」と言ってくれました。

看護士さんが出て行かれた後、コーラスの子達で歌を歌いました。みんなも輪になって聞きながら、また、涙を流していました。これで、松蔭での高校生活も、チャレプロも終わってしまいました。帰りたくない。そんな気持ちでいっぱいで、みんないつまでもミーティングの部屋に残っていました。

感動のラストシーン(ムービー)




「もう私達が集まることはないかも知れない。でも、私達の記憶から消えることは絶対にないです。」と友達が言いました。6年間もいたのに、このメンバーで始めて声を交わした子もいる。でも、「このメンバーを絶対忘れない」という気になれました。患者さんを励ますつもりが、励まされ、支えあいに涙した、忘れられないプログラムになりました。
(以上田中 ゆり)
★逓信病院の入院患者さんから、翌日手紙が届きました。★
松蔭高校「愛のキャラバン隊」の皆さん
昨日は逓信病院でミニコンサートを開いてくださりありがとうございました。1ヶ月にも及ぶ長い入院生活でまいっていただけに、皆さんの美しい歌声、楽しいひと時は私の心に深くしみ入り、元気をいただきました。他の入院患者の皆さんも口々に喜びを語っていました。皆さんがこのような活動を続けておられることに敬意を持ちました。どうぞこれからもがんばってよろこびをつたえつづけて下さい。
3年生の皆さん
ご卒業おめでとうございます。卒業の準備で何かと忙しい中、逓信病院でミニコンサートをしていただきありがとうございました。後輩の方達に活動を引きついでください。皆さんの前途に、神様の祝福を心よりお祈りいたします。

★患者さんからの手紙を読んだ生徒の感想★
私こんなお手紙をもらえるなんて夢にも思っていませんでした。キャラバン隊のコンサートは1時間だけだったけど、今回の交流でお互いの胸に残ったあたたかい感情と心の笑顔は永遠にあるんだと身をもって知ることが出来ました。人生で本当に大切なことを学ばせていただき、こちらこそ感謝しています。

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