松蔭だより

2018年1月9日 発行
松蔭中学校・高等学校
校長 浅井 宣光

     

      校長から保護者の皆さまへのメッセージです。       

       

 

神の国を何にたとえようか。どのようにたとえで示そうか。それは、からし種のようなものである。土に蒔(ま)くときには、地上のどんな種よりも小さいが、蒔くと成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。(マルコによる福音書4:30〜32)

2018年を迎えて
 あけましておめでとうございます。3学期の始業式では、いつも壇上の私と生徒との間で新年の挨拶を交わし、しめ飾りや歳神(としがみ)様、松の内などお正月の行事や習わしの話から始めます。初売りセールで元日から営業している店舗もあり、正月の過ごし方が変化して現在の中高生にはあまり馴染みがない事柄が多いようです。伝統行事を知ることは、グローバル社会で文化の多様性を理解する第一歩となります。アジア各国では、年始めよりもむしろ2月中旬の旧正月の期間に独特の習わしがあります。中国の旧正月「春節」は神戸の南京町でも毎年イベントが催されますし、ベトナムの「テト」や韓国の「ソルラル」など各地で色濃く活きる正月文化は興味深いものです。この休暇を利用する訪日外国人観光客も年々増加しているそうです。インバウンドと呼ばれるその数は10年前の800万人台から約2800万人(2017年予測)に上り、来日外国人と触れ会う機会も増え、また、海外旅行や外国での生活も特別な事では無くなっています。自らの文化を知るとともに異文化をリスペクトする姿勢は一人ひとりのグローバル化に欠かすことはできません。
 さて、先月のことになりますが、今年4月からの6日制授業ついての生徒対象説明会を開催しました。昨年度末の終業式で初めて生徒に伝達した際には、「えーッ」という、どよめきのような反応で何ともいえない空気が講堂に漂いました。その後は折に触れて土曜日の授業の話をしてきましたが、あきらめムードといったところでしょうか。土曜日に習い事をしている生徒は、時間帯変更などの調整をしているようです。詳細については当日配布したプリントをご覧いただくとして、生徒には、6日制授業を自分のチャンスとしてとらえてほしいとの趣旨で、次のように話しました。

 日本の中学生や高校生で、勉強が大好きだ、勉強しているとハッピーだ。ご飯を食べるのも忘れて勉強したい、という人はまずいないでしょう。皆さんも同じだと思います。でも勉強は大切だし、勉強はやらなければならない、ということはわかっているはずです。でも勉強は嫌いだから、勉強する気持ちが起こらない。だから家で勉強しない。そして勉強しないことが続くと、当然、授業がわからない。授業についていけないから勉強しない。これを「勉強の悪循環」と言います。皆さんの中にこの「悪循環」に陥っている人がいるのではありませんか?特に授業が難しくなっている高校生の皆さんの中に思い当たる人がいませんか?  
 これから、来年4月からの授業6日制について内容の説明があります。授業6日制の目的は、皆さんが高校3年生になり、進学したい大学や学部学科を見つけ出し、将来の夢や就きたい職業につながる進路に実際に進むことができるようにする、そのような学力を一人ひとりに付けて欲しいということです。土曜日も授業があることについて、多くの皆さんの気持ちは「嫌だなあ」というものでしょう。でも来年から学校の中身が変わることをチャンスと考えて欲しいのです。「勉強の悪循環」に陥(おちい)っている人は、それを立ち切るチャンスだととらえてください。何となく進路について動き出さなければならないと感じている人は、本格的スタートだと考えてください。高2の皆さんは、冬休みから3学期にかけて必ず計画を立て、高3になってからの6日制を上手に自分の生活パターンに組み入れ、使いこなしてください。
 正直なところ私も先生方も、学校が変わり、新しい枠組みとなることについて、不安や心配があります。しかし私たちもこれをチャンスととらえて、力を尽くして皆さんをサポートし応援することを約束します。もし皆さんが、何をしたらよいのか、どのようにしたらよいのかわからない、と質問にきてくれれば、そのやり方をアドバイスします。一人の先生に聞いてみて納得ができない、自分には合わないと思ったら、他の先生に質問してください。新しい学校の枠組みのなかで新しい学年が始まることを、自分のチャンスとしていただきたいと思っています。

(2017年12月15日 生徒対象6日制授業説明会より)

6日制授業にあたり、保護者の皆様にお願いしたいこと
 今回の6日制授業実施のねらいは、「学習習慣をつくり、自学自習の姿勢」を身に付けることです。授業に主体的に参加し、放課後の講座も積極的に活用して学校で学ぶ姿勢を身に付け、その延長として家庭学習に取り組む姿勢をつけたいと考えています。学習の未到達者については、指名して補習を実施します。
2学期終業式終了後には、中1〜高2の保護者の皆様を対象とした説明会を開催しました。私からは、教務の大槻先生、進路指導の佐々木聡先生の説明に先立って次の2点をお願いしました。
 まず第一に、今回の変更をきっかけとして毎日のお子様の生活パターンを3項目で見直していただきたいということです。@授業日の生活リズムをつくること。(特に朝食と睡眠時間)。A勉強机に向かう習慣をつくること。(毎日一定時間)。Bスマホの家庭ルールをつくること。(使用は午後9時まで。リビングでの充電のルールなど)。これらについて話合う時間をもっていただき、学年や家庭の生活スタイルに応じた「我が家のルール」作りを進めていただきますようお願いします。 
 次に、教員の働き方に関連することですが、教員の長時間労働や休日労働がマスコミ等でも取りあげられています。私学も同様に教員の働き方改革に取り組むことが求められており、長時間労働や時間外労働を抑制するため、下記についてご理解を願うものです。まず教員には、学校行事等がない場合に自宅研修をする「研究日」を週1回設定します。この措置により、担任や学年主任、またクラブ顧問等が「研究日」で不在の場合には、代行者がフォローできるようにします。クラブ活動については、原則として週あたり2日以上を「部活動休養日」とし、月〜金の平日の1日以上、土日のいずれか1日以上を原則として活動を休止する日とします。これは生徒にとっての休養日としての意味もあります。ただし、公式戦や大会、コンクール等の直前には、特例として活動を許可します。授業だけでなく、学校生活や活動に、教員も含めて新たな枠組みを作る2018年となります。ご理解とご協力をお願いいたします。

「一粒のからし種」 ― A Grain of Mustard Seed ―
 2018年は6日制授業など学校改革のスタートの年となります。現在、5年後の創立130周年にむけて将来構想「ビジョン130」の策定をすすめています。その作業のなかで松蔭女子学院全体の教育理念を表現する、最もふさわしい言葉はどのようなものかについて、併設大学と中高の担当者が話し合いを重ねてきました。その結果、標題の「一粒(ひとつぶ)のからし種」を学院のモットーとすることになりました。
 「からし種」は直径1ミリほどの大きさです。「もしあなたがたに、からし種ほどの信仰があったなら(ルカによる福音書17:5?6)」とたとえられるように最も小さいもの、ちっぽけなものを象徴しています。このからし種は、和からしとして食べられるシロカラシとは品種が違っていて、聖書の舞台である地中海沿岸を原産地とするクロガラシ(black mustard)のことだそうです。荒れ地でも育つアブラナ科アブラナ属の一年生の植物で、成長すると2メートルを超え、その種子は香辛料やハーブとして利用されました。春先には茎のてっぺんに4枚の黄色い花弁をつけます。イエスは、この小さな「からし種」に神様の愛と恵みが注がれるならば、姿かたちを変え、成長した大きな茎の頂に美しい花を咲かせ、鳥が宿るほどの木になることを約束しました。冒頭の聖句「神の国を何にたとえようか・・・」は古くから、小さなものから大きな成果が育つことのたとえとして使われてきたのです。
 昨年、神戸開港150周年ということで各所でさまざまな行事が開催されていました。1873(明治6)年、政府によってキリスト教禁教が解かれると、日本各地で欧米諸国の宣教師たちが活動を始め、神戸にも教会や学校が次々と建てられました。おおらかに異文化を受け容れた近代の神戸は、多様性を感じさせる街並みを作り上げ、独特の空気を醸し出しました。現在、異国情緒漂う観光スポットとなった北野異人館街の一角に産声をあげた、生徒数10名ほどの小さな学び舎が松蔭です。キリスト教主義にもとづく女子教育と家族主義を標榜し、校主フォス主教ほか数名の英国国教会(聖公会)宣教師と日本人スタッフが祈りの時を守りながら教育活動を行っていました。女子の就学率がまだ約30%と低い時代でした。緑豊かな六甲山と瀬戸内のおだやかな海にかこまれた美しい港町を舞台に、松蔭は3万人を超える少女たちを健やかに育んできました。小さな種が大きな植物に育つように学校が発展し、そこに学んだ生徒たちも自らのうちにある「一粒のからし種」を大きな茎として成長させ、花を咲かせて実を結んできたのです。一人ひとりの生徒が個性を伸ばし、社会に貢献する女性となって心豊かな人生を紡いでいくことを願い、大切に受け継がれてきた松蔭女子学院の教育理念をあらためてモットー「一粒のからし種」として再確認したいと思います。