松蔭だより

2017年3月1日 発行
松蔭中学校・高等学校
校長 浅井 宣光

     

      校長から保護者の皆さまへのメッセージです。       

       

 

わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。希望はわたしたちを欺(あざむ)くことがありません。 (ローマの信徒への手紙 5:3〜4)

高等学校卒業式を挙行しました
 2011年3月末、中学入学オリエンテーションは、その2週間前の東日本大震災の犠牲者を悼み、被災者に思いを寄せる祈りの時を持つことから始めました。原発の放射能で日本がどうなってしまうのかという不安を抱えながらの中学生活のスタートでしたが、以来早6年、本日、高等学校卒業の日を迎えました。中高6カ年、高校3カ年それぞれの皆勤生徒も例年より多かったようです。聖歌隊の合唱「心のふるさと松蔭」が講堂に響きわたり、卒業生だけで「別れの歌」を歌いました。この歌は同志社大学の送別の歌「春の調べ」で、戦前の高等女学校時代にも歌われていたようです。同志社の歌をなぜ本校で?という点についてはまた別の機会に触れたいと思います。生徒自身が選ぶ卒業生の歌はKiroroのBest Friend。「まだ まだ まだ やれるよ」の歌詞は、学年団の先生方がいつも生徒に訴え続けていたことでした。私の式辞の一部を紹介します。卒業生にこのような生き方をしてほしいというメッセージです。

 高等学校の卒業にあたり2つのことをお願いします。
1つ目は「橋をかける人になる」ということです。人との間に壁ではなく橋をつくる人になっていただきたいのです。
 あなた方がこれから生きる社会は、グローバル化する社会だと機会あるごとに耳にし目にしてきたことと思います。国内、国外を問わず異なる文化や価値観、異なる民族、国籍、人種の人々と交流し、触れ合っていくことがますます増えることになります。オープンハートの精神で偏見や先入観をもって人を見たり、いじめの心、差別の心を人に向けたりすることがないようにしないといけない。オープンハートは隣人への愛、奉仕の精神を私たちが示す最上の表現方法です。
 松蔭の学校生活の中であなた方は、たとえ自分とは考えや感性が異なっていても、性格が合わない場合でも、異なる意見を持つ場合であっても、同じ松蔭生どうし互いに認め、認められてきました。他者を冷酷に拒絶し、その存在を認めない排斥という壁を、本日卒業するあなた方は築いてはいません。どうぞその心のままで、生きる場所を松蔭の外に移し、謙虚な姿勢で人との間に壁をつくらず、橋をかける人になっていただきたいと思います。
 2つめは「物事を見通す人になる」ということです。表面だけでなく深い部分まで見通すことができる人になっていただきたいのです。いくつかの例を挙げたいと思います。 
 例えば情報化社会にあって物事を深い部分まで見通すということです。現在のネット社会、情報化社会では様々な情報が飛び交い、多岐にわたる情報に触れないまま生活していくことはできません。深い部分を見通すとは、情報を得て、判断しながら上手に利用することです。身近なこと、日本の社会のこと、国際社会のことなど事実からデマ、作り話にいたるまで様々な情報に接しますが、あふれる情報を冷静に分析して見通そうとする姿勢が必要なのです。東日本大震災で引き起こされた原発事故で、海外メディアは国内では報道されなかった情報を発信していました。事実を知るという意味でも広く情報を収集し、事実を見通すことが必要です。
 国際社会の問題で言えば、現在の日本と韓国の外交は、領土の問題や第2次世界大戦中の従軍慰安婦の問題によって危機的状況にあるとマスコミが報道しています。しかし、先月初めに韓国大邱市の信明高校の生徒たちが来校し、授業で交流したりホームステイをしました。手を取り合って笑顔で話す松蔭生と韓国の高校生の姿をマスコミは報道しません。外交や政治の問題と、人と人との交流は別次元のことなのだと現実を見通すことが必要なのです。
 パソコンやスマホを見ると、様々な年代だと思われる人がSNSで情報や自分の思いや感情を発信したり書き込んだりしています。悪意に満ちた批判や攻撃の言葉が匿名で並ぶことがあります。もしかすると書き込んだ人がたまたまイライラした気分であったり、思い通りにならない自分の人生から目をそらすために人を攻撃してうっぷん晴らしをしているだけかも知れません。しかし見聞きする者にとってみれば、悪意に満ちた言葉だけが記憶に残ります。そのような情報とも上手に付き合って行かねばなりません。自らの感情をコントロールしなければならない場合もあります。
  平和を守る、という観点からも物事を見通すことは必要です。先ほど述べたグローバル化の一方で、全く逆の状況であるナショナリズム、つまり自国第一主義の考え方が急速に広がっています。英国がEUからの離脱を決め、米国は移民やイスラムを初めとする異教徒排斥、移民制限の政策をすすめており、両国は今や内向き・反グローバルの先鋒と言ってよいでしょう。グローバル化は実は、ナショナリズムの広がりとセットで進んでいるのです。過激なナショナリズムが極限に達した時、歴史は常に戦争を記録してきました。すべての戦争は、開戦にあたっては自国と自国の利益を守るため、自国民の生命と財産を守るためにやむを得ず始めるのだ、と発信されてきたことが現実です。明治時代の日清・日露の両戦争もその後の大戦も、日本の利益が朝鮮半島、中国大陸、アジアで損なわれ、このままでは日本の国家が危険だ、その国家に住む日本人の命が危険だ、という理由で戦争を始めていました。冷静に物事を見通す目が必要です。
戦争だけでなく、人権や差別など社会の様々な問題、女性として歩む人生の途上で直面する様々な課題にお いて、物事の表面や世の皮相な流れに惑わされることなく、事情を見通し、必要な場合には自分の意見を表明できる人になっていただきたい。そのための知識を得ることや、情報を得るための外国語の勉強も必要でしょう。そのような勉強を続けていただくこともお願いします。
 橋をかける人。物事を見通す人。寛容で賢明な生き方する女性はとても素敵です。人として素晴らしい女性だと評されるような生き方をしていただきたいと心から願っています。
(2017年3月1日松蔭高等学校卒業式学校長式辞より)                
          
高校のプロジェクト型学習Blue Earth Project(BEP)
今年度のテーマは珊瑚(さんご)など海の環境保全 
 高校3年生57名が中心となり、環境に関する啓発活動であるBlue Earth Projectが続いています。以前の校長室だよりでもお伝えしましたが、今年度から高校1年生での取り組みも始まりました。次年度は高校全学年の取り組みとする予定です。この活動はプロジェクト型学習と呼ばれるプログラムで、プロジェクトの様々な段階で、協働する力、思考する力、判断する力、プレゼンテーションの力が求められます。また、「女子高生が社会を変える」のキャッチフレーズの通り、学校外の店舗や企業、行政に対する働きかけを進めることは、社会に関わり、つながりを持とうとする姿勢を育てます。
 今後予定されている教育改革は、大学入試改革に伴い求められる新たな学力を学校で身に付ける、という方向で議論が進んでいます。この新たな学力とは、従来の知識偏重型の学力ではなく、知識を活用し、やりたいことの実現のための主体的な学びの姿勢、他者との協働する力などになります。知識量で勝負するのではなく、知識をベースに物事をやり遂げる力を学ぼう、ということになるわけです。プロジェクト型学習のBEPはその「実践」という意味で今後の高校教育の目玉となるものです。BEPは2006年に始まりました。10年間の蓄積を財産として、次代の松蔭教育の柱の一つとしていきたいと考えています。
 さて、今年の活動テーマである珊瑚などの海の環境保全についてですが、珊瑚礁(さんごしょう)は生物の住み家となるだけでなく、えさにもなり、海洋生物の4分の1は珊瑚礁に暮らしていると言います。産卵や稚魚の育つ場所として生態系の中で重要な役割を担っている珊瑚礁。 生きている珊瑚はカラフルな美しい色を見せてくれますが、これは体内に共生する「褐虫藻(かっちゅうそう)」というごく小さな単細胞藻類の色で、珊瑚は褐虫藻を住ませるかわりに褐虫藻が光合成によってつくり出した酸素や、炭水化物、たんぱく質などの有機物を栄養として受け取っているそうです。また一部は粘液として体外に分泌され、生物の栄養分になります。珊瑚は海水の二酸化炭素濃度の調節にも不可欠で、海洋生物すべてに大きな影響があるといわれています。
 今年1月の新聞に次のような記事がありました。環境省の報告によれば、日本最大のサンゴ礁域として知られる沖縄県の石西礁湖(せきせいしょうこ)では、珊瑚の9割に「白化現象」という、褐虫藻が体内から抜け出して色が白っぽくなって衰弱する現象が見られたそうです。昨夏の高水温などが原因とみられ、昨年9月から年末にかけて石垣島と西表島の間の海域35地点を調査した結果、たった3ヶ月で死んだ珊瑚の割合が56.7%から70.1%に増えました。石西礁湖では1998年や2007年などにも大規模な白化現象が起こっており、地球温暖化が進むにつれてますます多発する恐れがあるといいます。BEP史上で初めての海の環境保全の取り組みです。活動中の生徒諸君にエールを送ります。私たちが暮らす地球環境の様々な課題に取り組んでいるBEP。まさにスーパーグローバルなプロジェクトとして、単なる学校での学びに留まらないスケールの大きな学びを提供します。詳細はホームページをご覧ください。

春期の交換留学制度  ニュージーランド春期短期交換留学 
 毎年夏休みに短期語学研修を実施しているニュージーランドのセントピーターズ校との間で、春期の交換留学制度を始めました。今回の留学生は、岸上和夏さん(高1)と山田茜さん(中3)に決まりました。派遣期間は、3月15日から4月5日までとなっています。交換留学ですので、4月には先方から2名の留学生が来日し登校する予定です。
 今年の夏休みの短期語学研修、韓国異文化研修ともに間もなく募集開始です。夏の海外研修が対象となる、海外異文化研修奨学制度が下記要領にて発足することになりましたので併せてお知らせいたします。     
<海外異文化奨学制度について>
(時期)2017年度夏期の海外語学研修・異文化研修より適用
(対象)派遣される中学生および高校生より5名程度
(条件)・語学研修・異文化研修に対して意欲的で派遣する生徒としてふさわしい人物であること。
     ・学業成績や学校生活において優秀であると認められること。
     ・ニュージーランド派遣生は、中学生=英検準2級以上、高校生=英検2級以上を取得。
     ・韓国派遣生は、韓国語能力試験初級(TOPIKT1〜2級)以上、または同等の韓国語能力。
(給付額)ニュージーランド St.Peters 短期語学研修         10万円
     韓国 信明高校・聖明女子中学校異文化研修         3万円
(選考)奨学金を希望する応募者の中から選考。


「英語の松蔭」プロジェクト第一弾  英検準1級講座開講

 中高で4名の生徒が昨年秋の第2回英検までに準1級に合格しています。あとに続けと松蔭生の英語力向上をはかる「英語の松蔭」プロジェクト第一弾、英検準1級講座を開講します。準1級講座の開講は初めてですが、中3〜高2生徒17名が申し込みました。3月11日開講、全7回の予定で、受講料は7,000円+テキスト代となっています。3月に6回、5月に1回受講し、6月の第1回英検での合格を目指します。その後についても、希望があれば開講を検討します。1月に実施した英検・TOEIC全校受験の結果も間もなく判明します。結果が楽しみです。

松蔭女子学院創立130周年記念募金のお願い
 2012年の創立120周年にあたりましては多くの寄付をお寄せいただき、校舎の耐震補強・リニューアル工事を行うことができました。この度、創立130周年に向けて新たな教育環境の整備、教育プログラムの充実を目的として「創立130周年記念募金」を実施することになりました。保護者の皆様をはじめ、関係各位にご協力をお願いする次第です。インターネットを利用した寄付も出来るようになりました。ホームページの左下のバナーから申し込めるようにしています。ご寄付に対する記念品はこれまで、制服を着るクマのぬいぐるみでしたが、新たな記念品も加える予定です。募金の趣旨にご理解とご賛同を賜り、皆様のご協力をお願いする次第です。